男性の更年期障害が広く知られるようになってきましたが、その診断や治療は医学の世界でもまだ新しい領域です。学会でも、「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」という表現が採用されたばかりです。
LOH症候群とは、簡単に言えば「加齢に伴う身体の変化により現れる諸症状」という意味。更年期障害の原因は周知の通り、性ホルモンの低下ですが、複数の要因が複雑にからみ合って起こります。
加齢による多様な体の変化やストレスが、男性更年期障害の要因となります。
若い人ほどストレスの影響が強く、年齢が上がるにつれ性ホルモン低下による症状が前面に出てきやすいもので、男性ホルモンであるテストステロンは、20歳代をピークに減少します。
減少のスピードが速いと更年期障害になりやすいとも言われていますが、はっきりしたことはわかっておらず、テストステロンの量と更年期障害の症状は必ずしも相関しないとされています。テストステロンの分泌量には個人差があり、調べてみなければわかりません。テストステロンの値が低くても、若い頃も今もエネルギッシュで元気という中高年男性もいます。
女性は閉経時に急激にホルモンが低下するが、男性のホルモンの変化はゆるやかで、何の症状もなく老年期を迎えることができる人もいます。性ホルモンの減少は本来、加齢による自然な体の変化で、つらい自覚症状がある場合に、治療をしてQOL(生活の質)を維持しようというのが、LOH症候群の基本的な考え方です。
ほてり・のぼせ、めまい、疲労感、頻尿などのほか、「何となくやる気が出ない」といった精神的な症状やED(勃起不全)も要注意。いずれも更年期障害の可能性があります。
男性ホルモンが減少するため、ヒゲや体毛が薄くなる、内臓脂肪が増えてお腹が出てくるなど、体の変化が目に見えてわかることもあります。性機能障害については起床時の勃起、いわゆる「朝立ち」がポイント。朝立ちが1ヶ月以上ない場合は、糖尿病などの内科的な病気も疑われます。また「やる気が出ない、何をしても楽しくない」といった精神的な症状も見逃せません。
更年期障害は命にかかわるものではないですが、うつ症状が悪化すると自殺願望が生じることもあり、精神症状は比較的若い年齢で出やすいので、まじめで一生懸命働く人、ストレスをためやすい人はご注意ください。
更年期は一般に40〜50歳代を指しますが、男性ホルモンは20歳代をピークに減少していくため、若い人でも症状が出る可能性があります。年齢が上がるにつれ身体症状が現れやすいですが、世代を問わず「何となく体調が優れない」「疲れやすい」というあいまいな訴えが多く、「何だかよくわからない」不調こそが、更年期障害の危険信号とも言えます。
男性更年期障害(LOH症候群)では、ホルモン補充療法のほか、漢方薬や抗うつ薬、バイアグラによる治療もよく行われます。更年期障害は性ホルモンの低下が主な原因であり、ホルモン補充療法が最適の治療法のようにも思えますが、言い方をかえると安全で症状が抑えられるなら、さまざまな方法を試すことができます。漢方薬やバイアグラによって、性ホルモンの分泌が直接的に促されるわけではないですが、大切なのは性ホルモンを増やすことではなく、QOL(生活の質)を維持することなのです。場合によっては、漢方薬などをホルモン補充療法と併用することも可能です。
疲れやすい、仕事に集中できない、性欲が低下した・・・。これらはどれも男性更年期障害(LOH症候群)の重要なサインですが、「何となくだるい」「性欲がない」といった理由で病院へ行くのは気が進まないものです。「どの科へいけばよいかわからない」「内科へ行ったが異常はないと言われた」と、一人で悩み苦しんでいる人も少なくありません。男性更年期障害の診断・治療に携わる医師のほとんどは泌尿器科医。まだ数は多くないですが、最近は、大学病院などの専門外来や、更年期障害の治療を積極的に行うクリニックも増えてきました。男性ホルモンの低下を防ぐ手立てはありませんが、「ゆっくり休む」「運動をする」「ストレスをためない」などが、更年期障害の予防のみならず、症状をやわらげることにもつながります。
この時期の男性は職場でも家庭でも責任が重くのしかかり、心身ともにストレスが多いものです。体調が悪いときは無理をせず、早めに治療を受けることが重要です。
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