慢性腎臓病と慢性腎疾患は同じ意味です。学会によってchronic kidney diseaseの日本語訳が違うだけです。最近はこれまで日本腎臓学会が使用してきた慢性腎臓病と言うほうが多いようです。
慢性腎臓病は2000年にNational Kidney Foundation(NKF;米国腎臓財団)によって提唱された新しい病気のとらえ方(概念)です。病気の進行程度により、ステージ1から5まで分類されています。数字が多いほど重症です。糖尿病性腎障害や高血圧性腎障害、ネフローゼ症候群などもこの疾患名の範疇(はんちゅう)に入ります。今まで個別に名前が付けられていた疾患をまとめたものと理解してください。
慢性腎不全は慢性腎臓病が進行した状態と考えてください。末期腎不全とも近い表現です。血液透析や腎移植を必要とするような状態を指します。
大規模な疫学調査により、腎機能の指標である血清クレアチニンが1.5mg/dL付近の方、GFR(糸球体濾過率)が60mL/分を割る方、さらにタンパク尿や微量アルブミン尿を伴う方は心臓や脳などの血管トラブル(例:狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳内出血)を起こしやすいことがわかってきました。また血液透析や腎移植を必要とするような末期腎不全の重要な危険因子でもあります。患者が激増しており、医療費暴騰の問題もあるため、全世界の医療従事者や製薬メーカー、そして行政や経済界が注目しています。
早急に診断すれば治療法があるだけにマスコミでもよく取り上げられています。
慢性腎臓病の進行した状態であるネフローゼ症候群や透析患者では心血管疾患(例:狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳内出血)トラブルのリスクが高いことは以前から知られていました。
最近明らかとなってきた重要なデータによると、適切な治療をなされていない中等度の慢性腎臓病でも心血管トラブルを起こしやすいとされています。腎臓そのものは“沈黙の臓器”と言われ、症状が進行しないと自覚症状が出現してきませんが、水面下で心臓や脳に悪影響を与えていることになります。
適切な検査が行われてない場合、慢性腎臓病は見逃されてしまう可能性は高いと思われます。
また狭心症や脳梗塞を発症してから慢性腎臓病の存在を指摘されることも多いようです。
日本腎臓病学会によると20歳以上の一般住においてGFR(糸球体濾過率)が60mL/min/1.73m² 未満の人は約1926万人(18.7%)、GFR(糸球体濾過率)50mL/min/1.73m² 未満の人は418万人(4.1%)いると言われています。ちなみに米国ではGFR(糸球体濾過率)が60mL/min/1.73m² 未満の人は成人人口の約4.6%(約830万人)存在すると言われています。
1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。
特にタンパク尿の存在が重要
2)GFR(糸球体濾過率)60mL/min/1.73m² 未満
1)2)のいずれかまたは両方が3か月以上持続するもの
ひとつの原因によって起こる病気ではなく、さまざまなリスクファクター(危険因子)が複合的に作用して慢性腎臓病へと進展していくようです。 慢性腎臓病のリスクファクター(危険因子)としては以下のものが挙げられています。
高齢、慢性腎臓病の家族歴、過去の健診における尿異常や腎機能異常および腎形態異常、脂質異常症、高尿酸血症、NSAIDsといわれる鎮痛剤の使用歴、急性腎不全の既往、高血圧、耐糖能異常や糖尿病、肥満およびメタボリックシンドローム、膠原病、尿路その他の感染症、尿路結石etc…
腎臓は沈黙の臓器と言われ、症状が進行しないと自覚症状が出現してきません。易疲労感、倦怠感、食欲不振、嘔気、浮腫などの症状は病気が進行した状態で出てきます。
通常レベルの健診やドックであれば、血清クレアチニン、尿蛋白などの項目は入っております。少しでも異常値があればかかりつけのお医者さんに受診することをお勧めします。
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